2025年5月10日 takao

原神ガチャ表示問題の全貌 | FTC罰金事件の解説と影響

原神ガチャ表示の何が問題? — パイモンもびっくりの「祈願」の裏側

願い事(ガチャ)の表示方法に潜むトラップ

原神の「祈願」(いわゆるガチャ)は、一見すると単純に見えて実は複雑な仕組みが詰め込まれています。プレイヤーはまず現実のお金でゲーム内通貨(原石)を購入し、その原石をさらにガチャ用アイテム(出会いの縁・紡がれた運命)に交換してようやく祈願を行います。要するに、実際にいくら課金しているのか分かりにくいようになっているのです。

この「多段変換システム」は、パイモンですら頭を抱えるレベルのややこしさ。プレイヤーからすれば、ガチャ1回に必要なリアルマネーの額がぼんやりしていて、「気づいたら○万円使っていた!」なんて事態も起こり得ます。

原神ガチャの多段変換の流れ
実際のお金 → 原石 → 紡がれた運命/出会いの縁 → ガチャ

さらに問題なのは、当選確率の低さと表示のしかたです。原神の最高レア(星5)キャラクターや武器は0.6%程度という極めて低い確率ですが、ゲーム内では「星5確定まで○回」などとピティ(天井)システムが強調され、あたかも手が届きそうな印象を与えます。

期間限定の祈願でしか入手できない5⭐報酬をゲーム内バナー広告や人気ストリーマーの"ガチャ動画"で煽り立て、プレイヤーに「今引かなきゃ損!」と思わせる手法も指摘されています。限定感と雰囲気でユーザーの射幸心を刺激しているわけです。

法律の目で見るとアウト?各国の消費者保護法との衝突

リアル世界の法律から見ると、こうしたガチャの表示・販売方法にはいくつもの赤信号が灯っていました。アメリカでは連邦取引委員会(FTC)が原神の運営会社Cognosphere(HoYoverse)に対し、「子供を含むプレイヤーに対しガチャの本当のコストや当選確率を不明瞭にし、誤解を招く表示をした」として厳しく指摘しました。

FTC消費者保護局長は「原神は当選確率が極めて低い景品に子供たちが数百ドル(数万円)を費やすよう欺いていた」とまで非難しています。

さらに13歳未満の子供から親の同意なく個人情報を収集していたことも問題視され、これは児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)違反にあたります。

日本での法律との関係

日本でも、ガチャ表示に関しては景品表示法という法律があります。この法律では、商品の質や価格について実際よりも著しく良い・有利に見せかける表示を禁じています(いわゆる「優良誤認」「有利誤認」表示の禁止)。

過去には「出現率3%と表示していたレアキャラが実際には0.333%しかなかった」というスマホゲームの事例が摘発され、運営会社に措置命令と課徴金が課されたこともあります。幸い原神では確率自体を偽るような不正は報告されていませんが、もし日本国内でガチャ確率の虚偽表示などをすれば景品表示法違反でアウトになるでしょう。

欧州でもベルギーではルートボックス(ガチャ)は違法と判断され、一部ゲームの配信停止に追い込まれた例があります。各国で規制の動きが強まる中、原神のガチャも法的監視の的になっていたのです。

Cognosphereの公式対応:「お騒がせしました(でも認めません)」

これらの指摘を受けて、運営会社のCognosphere(HoYoverse)は2000万ドル(約30~31億円)の罰金支払いと諸施策の実施に合意しました。公式声明では、「FTCの主張には不正確なものも多いが、コミュニティの信頼を重視し透明性向上のために和解した」と述べています。

やや強がりにも聞こえますが、ともかく親の同意なしに16歳未満へガチャを販売しないことや、ゲーム内表示の改善を約束しました。具体的には、年齢確認と保護者の同意を得る仕組みの導入、そしてガチャ(ルートボックス)の確率・価格などをより明確に開示する対策を今後数ヶ月で行うとしています。

実際、原神はVer.5.0(2024年8月)の大型アップデートでガチャ仕様の緩和策を導入しました。星5キャラのピックアップ(目玉キャラ)が当たる確率を50%から55%に引き上げる新システム「掴みし明光」が追加され、武器ガチャの天井も緩和されています。

これにより「すり抜け」(狙い以外が出る残念ガチャ)の可能性が若干減り、ユーザーにとって少し優しい設計になったと言えるでしょう。もっとも、5%の上乗せでは焼け石に水との声もありますが、運営としては透明性・良心性アピールの一環だったのかもしれません。正直、「誤差レベルかも…?」とツッコミたくなる微調整ですが、ないよりマシでしょう。

炎上?爆笑?コミュニティの反応

このニュースに対し、コミュニティの反応は玉石混交でした。一部のプレイヤーは「罰金2000万ドル払うなんて、さすがユーザーをナメた運営だ」と痛烈に皮肉りました。確かに原神はサービス開始からの累計収益が数十億ドル規模とも言われており、30億円程度の罰金は"パイモンのおやつ代"程度とも揶揄されています。

海外掲示板でも「ミホヨにとってははした金で黙らせにきた感じだな」といった辛辣なコメントが飛び交い、運営への不信感を露わにする声が多く見られました。

一方で、「これで未成年が親のクレカで爆死する事故が減るなら良い」と前向きに評価する意見もあります。「次のアップデートでパイモンが年齢確認してくるのか?」、「ガチャ画面に『※ご利用は計画的に』ってテイワット銀行から注意書き出そう」など、ジョークを交えつつ今後の変化を予想する声も。

Twitterや掲示板では、公式対応に対し「まるで璃月の契約みたいに面倒な手続きが増えそう」とか「パイモンが規約を読み上げるムービーが始まったりしてw」といった冗談が飛び交い、苦笑いする旅人(プレイヤー)も少なくありません。騒動そのものはシリアスな問題ですが、そこは原神コミュニティ、ユーモアを交えて受け止める懐の深さも見せています。

プレイヤー&業界への影響:テイワット発、業界行き?

今回の件で、ゲーム内外の「透明性」が改めてクローズアップされました。まずプレイヤー視点では、未成年者への課金規制強化で「知らぬ間に高額請求」という最悪の事態を防げる可能性があります。親の同意が必要となれば、少なくとも子どもが勝手に大金を注ぎ込むリスクは減るでしょう。

また、ガチャ画面で実際の金額換算や確率がより明示されれば、「星5一体ゲットに○円かかった…」と後から青ざめる前に冷静になれるかもしれません。パイモンにだまされて(?)大金を溶かしていた旅人たちも、これからは財布と相談しながら冒険ができるようになる…かも?

ゲーム業界全体への波及効果

ゲーム業界全体への波及も見逃せません。今回FTCが断固とした姿勢を示したことで、他のガチャ系ゲーム運営も戦々恐々でしょう。実際、日本のソシャゲ業界では以前から確率表示の義務化やコンプガチャ禁止など自主規制が進んできましたが、さらなる透明性や未成年保護の流れが強まる可能性があります。

「ユーザーに不利な"演出"や仕組みはないか?」と各社が見直すきっかけとなり、健全な課金システムへのアップデート競争が起きるかもしれません。最悪、各国でガチャが賭博と見なされ規制されれば、ビジネスモデルの転換も迫られるでしょう。そうなれば原神のみならず、多くの基本無料ゲームの収益構造に地殻変動が起きます。

幸い、今回の原神のケースではゲーム自体がサービス終了に追い込まれるような事態ではなく、運営も改善策を講じる姿勢を見せています。つまり、プレイヤーにとって遊びそのものが損なわれる心配は少なそうです。一方で、運営各社には「もうユーザーを惑わすような表示はできないぞ」という警鐘が鳴らされた形です。これは長い目で見れば、ユーザーに優しい業界への一歩かもしれません。

おわりに:ガチャとの上手な付き合い方

原神のガチャ表示問題とその法的トラブルは、パイモンのトラブルメーカーぶり(?)も相まって大きな話題となりました。しかし、運営が対応を約束したことで、ひとまず旅人たちは胸を撫で下ろしていることでしょう。

「課金は計画的に」――これは七神(運営)から与えられた試練とも言えます。幸いテイワットには、財布に優しいイベント配布や天井救済システムもありますから、今後は表示の改善とあわせて健全に原神ライフを楽しめる環境になることを期待したいですね。パイモンも「これ以上トラブル起こさないでよ!」とどこかほっとしている…かもしれません。

参考資料: 原神ガチャ表示問題に関する報道、法律関連情報、Cognosphere公式声明と対応策、コミュニティの反応、業界への影響分析など。